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使用者責任と逆求償②

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4 逆求償とは何でしょうか

それでは、先の場合と異なり被害者が、使用者ではなく被用者に対し請求を行った場合はどうなるでしょうか。

上述のとおり、被害者は使用者及び被用者のいずれに対しても請求を行うことができる以上、被用者は被害者から請求を受けた場合には、被害者に対し、損害を賠償する必要があります。

これに対し、被用者が、使用者に対し、被害者に支払った損害賠償金の一部を支払うよう請求することはできるでしょうか。先に述べたように、使用者から被用者に対しての請求を求償と表現することとの対比から、被用者から使用者に対しての請求については「逆求償」と表現されることが一般的です。この逆求償について、民法には規定がないため、その請求の可否について、様々な議論が行われてきました。

この点について最高裁判所は、トラックの運転手が業務中に死亡事故を起こし、一定の賠償金を被害者(遺族)に支払い、その支払った賠償金を使用者に対し請求した事案において、「被用者は、…損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができると解すべき」として、逆求償を認める判断を示しました(最判令和2年2月28日民集74巻2号106頁)。

原審(大阪高判平成30年4月27日)は、「民法715条3項の(使用者の)求償権が制限される場合と同じ理由をもって、逆求償という権利が発生する根拠とまですることは困難であ」って、「結果が公平に見えることがあるだけでは、理由とはならない」として逆求償を認めないとしていましたが、最高裁判所は、原審の判断を覆し、「使用者責任の趣旨からすれば、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきであ」り、「使用者が第三者(被害者)に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は…、被用者に対して求償することができると解すべきところ、上記の場合と被用者が第三者(被害者)の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない」(括弧内当事務所追記)として、被用者の、使用者に対する、(逆)求償を認める新判断を示しました。

 

5 おわりに

以上のとおり、最高裁判所は逆求償が可能であることについては認めましたが、被用者が使用者に請求できる金額については、改めて高等裁判所において審理するよう差し戻す旨の判断を示しています。使用者の求償権の行使の場合と同様、損害の公平な分担という見地からは、使用者と被用者がいかなる割合で損害を分担すべきかについては非常に難しい判断が求められます。過去の裁判例も含めた検討が必要になる場合も多々あるかと思いますので、使用者又は被用者に対し、求償を行うような場合には、一度当事務所にご相談にいらしてみてはいかがでしょうか。

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