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整骨院の施術費が認められるためには(連載第3回)

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6 保険会社の担当者は整骨院への通院を認めてくれたけれど

整骨院へ通院する場合、保険会社の担当者に整骨院へ通っても良いか確認して、担当者が通っても良いと言ったので通院する、というケースも多く存在します。
もっとも、整骨院での施術が必要かつ相当な治療行為であるか否かは、前記のとおり、施術の必要性、有効性等の諸要素を総合的に考慮して判断されます。

そして、施術の必要性、有効性は、専ら医学的な見地から判断されるべき要素であるため、医師の指示や同意があったかという点が重視される傾向にあります。そのため、保険会社の担当者が了承したからといって、施術の必要性や有効性が直ちに認められるわけではありません。

しかし、「保険会社が整骨院に通っても良いと言ったのに、後になってから、やっぱり整骨院の費用は認めない、というのはおかしいのでは?」と感じる方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

法律の世界では、自分の取った言動と矛盾する言動を行うことは許されないという「禁反言の原則」と呼ばれる法理があります。
民法1条2項において、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」として信義誠実の原則(信義則)が定められており、禁反言の原則も、この信義則から派生して認められると考えられています。

そこで、保険会社の担当者が整骨院への通院を認めていたにもかかわらず、後に整骨院の施術費を否認するのは禁反言の原則に反している、として争われた事例(大分地裁平成25年9月20日判決(自保ジャーナル1921号42頁))がありますので、ご紹介します。

この事例は、保険会社の担当者の承諾を得た上で整骨院へ通院し、施術費が支払われていたにもかかわらず、その後、訴訟となった段階で、整骨院での施術は必要かつ相当な治療行為ではなく、事故との因果関係が認められないとして争われたというものです。
裁判所は、「原告は、A整骨院における治療によって、痛みが緩和され、治癒が早まったと供述するが、これを裏付ける医学的な根拠はない」として「A整骨院における治療が必要かつ相当なものであったとはいえず、A整骨院の治療費については、本件事故と相当因果関係を有する損害とは認められない」と結論づけました。
その上で、裁判所は、「任意保険会社との示談交渉段階で、損害の内訳として治療費として認めたものを訴訟段階で否認したとしても、それが直ちに信義則違反となるものではなく、本件において、被告側に、禁反言に該当する事情の存在は認められない」と判示し、整骨院の施術費を認めませんでした(その後、この事件の原告は控訴しましたが、福岡高裁も整骨院の施術費を認めませんでした。)。

7 まとめ

整骨院への通院を巡っては、保険会社との間で争いになることが少なくありません。
整骨院への通院を開始するに当たっては、単に保険会社の担当者に確認するだけでなく、主治医ともよく相談した上で判断する必要があります。

「整骨院に通いたいけど大丈夫だろうか」
「保険会社から整骨院は駄目と言われてしまった」
など、整骨院への通院に関してご不安がある方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故事件の専門サイトも開設しておりますので、宜しければこちらもご覧下さい。

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