トピックス

HOME > 著作権に係る契約における注意事項

著作権に係る契約における注意事項

1 はじめに

事業を行うにあたって、あまり意識されることはないかもしれませんが、著作権に関する契約を締結することが少なくありません。

例えば、会社のホームページの作成、会社ロゴデザインの作成、システムの開発などを委託する場合、その契約には全て著作権が関係します。

そこで、本コラムでは、著作権に関する簡単な説明をした上で、契約における注意事項について記載します。

 

2 著作権について

⑴ 著作権とは?

著作権とは、著作物を保護するための権利であり、著作物の創作と同時に発生します。

⑵ 著作物とは?

著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(著作権法2条1項1号)。

すなわち、著作物と認められるためには、以下の4点が必要となります。

・「思想又は感情」を含むこと
(コンピューターの自動生成物などは著作物としては認められません)

・「表現」されたものであること
(外部から認識する事ができない頭の中にあるアイディア等は著作物として認められません。)

・「創作性」があること
(著作者の何らかの個性が表現されていれば足りるとされており、多くの場合、児童の作文やお絵かき等であっても創作性が認められます。)

・「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
(ただし、現在では、プログラムやデータベースなども著作物として認められることがあるため、本要件については、上記4つの類型のいずれに属するかというよりも、著作権法で保護すべき文化的所産といえるか否かについての判断となっています。)

3 著作権に関する契約を締結する上での注意事項

⑴ 著作権の帰属

著作物の制作を委託した場合であっても、著作権は原則としてその著作者(制作者)に帰属することになります。

そのため、契約書において、著作権が、依頼会社(発注者)と制作者のどちらに帰属させるのかを明記する必要があります。

また、著作権を制作者に帰属させたままとする場合には、依頼会社がどのような態様で著作物を利用できるのかについて明記する必要があります(利用方法の具体的な定め方は、後述⑶をご参照ください。)。

さらに、著作権を依頼会社に帰属させること(制作者から著作権の譲渡を受けること)になった場合には、その帰属させる権利に著作権法27条及び同法28条(※)に定める2つの権利を含むか否かを明記する必要があります。なぜなら、この2つの権利については、著作権法上、著作権の譲渡の際に明示しない限り、権利が移転しなかったものと推定されることになっているからです(著作権法61条2項)。これは、この2つの権利が著作者が有する元々の著作物の利用権とは別個の形態の利用権であり、著作物の利用範囲を大幅に広げる可能性があるため、著作物の譲渡にあたり改めて著作者又は著作権者の意思を確認する必要があるとの要請に基づくものです。

※著作権法27条

著作者がその著作物の翻訳・編曲・変形または翻案に関する排他的な権利を有する旨を定めた規定(翻案等により新たに創作された著作物のことを二次的著作物といいます。)

※著作権法28条

著作権法27条に規定される翻案等により創作された著作物(二次的著作物)が利用される場合にはその原著作物(翻案等の前の著作物)も利用されることとなることから、二次的著作物の利用に関し、原著作物の著作者が二次的著作物の著作者の有するのと同様に著作権法の定める各権利について排他的権利を有する旨を定めた規定
例)ある漫画に登場した人物のキャラクターグッズを販売する場合には、当該キャラクターグッズは当該漫画の二次的著作物にあたるため、その販売においては、キャラクターグッズの著作者に加え、原著作物である当該漫画の著作者の承諾が必要になります。

 

⑵ 著作者人格権の行使の有無

著作者には、著作者人格権(※)が認められています。

著作者人格権は、一身専属的な権利とされているため、著作権と異なり、譲渡することができません。そこで、著作権に係る契約においては、契約に基づき作成された成果物(著作物)について、著作者人格権の行使の可否について定めておく必要があります。

※著作者人格権

著作者人格権には、以下の3つの権利があります。

①公表権(著作権法18条)
自己の未発表の著作物を公表するか否か、どのような形・時期で公表するのかという点について、著作者が決定できる権利

②氏名表示権(著作権法19条)
著作物の原著作物に、または著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、氏名を付すか否か、またはどのような氏名を付すかどうかを著作者が決定できる権利

③同一性保持権(著作権法20条)
著作者が、自己の著作物とその題号につき、意に反して変更、切除その他の改変を受けないという権利

⑶ 著作物の利用方法

著作権の譲渡がなされる場合は利用方法を定める必然性はありませんが、譲渡がなされない場合には、制作された著作物の利用方法(利用許諾)を定める必要があります。このような定めがない場合には、当事者間で利用方法の認識に齟齬があった場合などに、紛争が生じる可能性があります。

そして、利用方法について定める場合には、少なくとも、①著作物の利用範囲(利用形態)、②利用態様(著作権法上のどの権利について許諾を受けるか)、③利用期間、④利用料について、定める必要があります。

4 おわりに

特に、デザインの委託に関する契約などについては、デザイン会社の見積書に基づいて仕事を発注し納品してもらうという流れの中で、少なからず、契約書が作成されていないことがあります。しかしながら、契約書を作成しておかなければ、著作権の帰属やその利用方法などについて、事後的に紛争が生じる場合があります。

契約書上、どのような記載をすべきか、また、そもそも契約書を作成すべきかなど、ご不安やご疑問がありましたら、是非一度ご相談ください。

 

契約・契約書

 

著作権に関わる法律相談は、村松法律事務所までご連絡ください。

お問い合わせ

 

契約書に関わる法律解説の参照動画:解説者 弁護士 石松慶康

〒060-0002
札幌市中央区北2条西9丁目インファス5階
TEL 011-281-0757
FAX 011-281-0886
受付時間9:00~17:30(時間外、土日祝日は応相談)

はじめての方でもお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

お悩みや問題の解決のために、私たちが力になります。折れそうになった心を1本の電話が支えることがあります。
10名以上の弁護士と専門家のネットワークがあなたの問題解決をお手伝いします。まずはお気軽にお問い合わせください。