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従業員の横領等と重加算税(連載第4回)

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(3)  裁決における判断枠組みへの当てはめ

 裁決では、
 ①について、「経営に参画することや、経理業務に関与することはなく、(中略)地位権限は、一使用人としての限定されたものであった」と認定し、
 ②について、従業員が詐取したお金を個人的な使途に費消していたことや、会社がその従業員に対し懲戒解雇処分をし、金銭の返還請求を行なっていることなどから、不正行為が会社の業務の一環として行われたものではないと認定しており、
 これらのことから、従業員の不正行為を会社の行為とは認定できないと判断しています。

 このように、裁決では、
①経営や経理業務についての地位・権限がなかったこと、
②個人的な利益を追求する行為であり、会社のためにする要素がなかったこと
 が重視されたようです。

(4)  「③従業員に対する管理・監督の状況」の位置づけ

 ③の「その従業員に対する管理・監督の状況」については、会社が従業員に対する管理・監督を怠ったことが、会社の行為と認定する上での積極的な要素となるというよりは、会社による管理・監督に不備がなかったのであれば、仮に従業員がその地位・権限に基づいて会社の業務の一環としてした行為であったとしても、会社がコントロールし得なかった以上、会社の行為とは認定できない、というように、会社の行為と認定する上での消極的な要素として位置付けられると考えられます。

 つまり、①と②の要素から会社の行為とみることのできない行為について、③会社が管理・監督を怠ったというだけの理由で会社の行為と認定することはできないものと思われます。

 実際、この裁決も、③の事情について、会社の従業員に対する管理・監督が不十分であったと認定しながら、①と②の事情から会社の行為と認定できない以上、③の管理・監督の不備があるからといって会社の行為と認定することはできないと判断しており、結局①と②の事情が判断の決め手になっています。

 なお、①と②の事情から、会社から与えられた地位・権限に基づき会社の業務の一環としてされた行為といえる行為については、原則として会社としての管理・監督責任が及ぶと考えられますから、管理・監督に不備がなかったという③の要素が決め手となって会社の行為とはいえないと判断されることもまた、現実にはなかなか難しいのではないかと思われます。

(5) 残された課題

 そうすると、従業員の行為が会社の行為と認定できるか否かについては、①会社から与えられた地位・権限や、②行為の態様からみて、会社から与えられた地位・権限に基づいて会社の業務の一環としてされた行為かどうかが主たるポイントになりそうです。

 もっとも、このように整理したところで、判断基準は、なお非常に曖昧です。特に、会社の業務の一環としてされたかどうかの評価は難問で、各事案において判断者によって評価が分かれうるところです。

 この裁決の事案についてみても、問題の従業員は、会社の経営等に関与してはいなかったとはいえ、会社から、担当する工事について、施主との交渉、下請業者の選定、工事の管理等の対外的業務についての権限を与えられていたわけですから、担当工事に関して、下請業者に請求書を発行させる行為は、会社から与えられた権限に基づく会社の業務の一環であるという見方もできそうです。

 実際、課税庁側はこのような主張をしていましたが、裁決ではこの点についての課税庁側の主張に正面からは答えていないように見えます。判断の分かれ目は紙一重であるといえそうです。

 

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